デザイナーという仕事を続けていると、必ず向き合うことになる存在があります。
それが、「ボツ案」。
時間をかけ、悩み、
時には深夜まで粘って生み出したにもかかわらず、
世に出ることなく
“なんか違う”
のひとことで日の目を見ずに消えていくデザインたち。
- クライアントに選ばれなかった案。
- 方向性としては悪くなかったが、今回は見送られた案。
- あるいは、自分自身で“なんか違う”と判断した案
数えきれないほどのボツ案が、PCの奥深くに眠っています。

実際のご依頼では、2〜3案をご提案することが多いのですが、
その裏側では、
少なくとも5〜6案、
多いときには10〜20案以上の可能性からしぼり、
選びぬかれた案をご提案しています。
遠回りしながら
「ああでもない」
「いや、やっぱりこうかも」
と一つずつ形を変え、磨き、育てていきますが、
そうして生まれた案の多くは最終的に選ばれずに、ボツ案になります。
一度はサヨナラするけれど、作り手としては、
「せっかく生まれてきたのだから、いつかどこかで日の目を見てほしい・・・」
そんな気持ちの中、後ろ髪を引かれながら、【old】と名付けたフォルダにドラッグして、
そっと閉じて視界から消すことも少なくありません。
ボツ案は無駄なのか?
「没(ボツ)」という言葉は、文字のせいなのか、
どこか闇に埋葬されるような、暗く重たい印象をまとっている気がします。
だけど、ボツ案の中には、
選ばれなかった理由や、
挑戦した形跡、
新しく試した思考や判断の痕跡といった、
“デザイナーの成長に欠かせない何か”が確かに残っています。
それらは無駄になってしまったのではなく、
確実に自分の血となり肉となり、
デザイナーの引き出しとして積み重なっていくものです。
だから私は
ボツ案=「転生待ち案」だと思っています。
今回は使われなかったけれど、どこかで別の姿になって、
また生まれてくるかもしれない存在。
ボツ案は宝物
クリエイターの仕事というのは
時間をかけて作っても、ボツ案しか残らない時もあります。
そんな悔しさや手応えのなさを抱えながら、それでも作り続けていると、
不思議なことに、すっかり忘れた頃、
昔サヨナラしたはずの案が、
別の仕事でふとヒントとして立ち上がってくることがあります。
転生待ちだった案が、違う形で戻ってくる瞬間。
そんなふうに小さな挫折と再発見を重ねることで、
いつの間にか引き出しの数が増え、 デザイナーは少しずつ強く、深くなっていく気がします。

自分が自信を持ってご提案したものがボツになってしまうと、正直がっかり感もあります。
それでも
「なぜ選ばれなかったのか」
「どこに可能性があったのか」
を拾い上げ、次に使える形へと変えていく。
そうやって、ボツ案にフォーカスを当てて、
自分の中で血肉に変えることで、ボツ案を宝物として成仏させています。
そういった小さな繰り返しこそが、デザイナーが成長していくために、
避けて通ることのできないイニシエーションなのではないかと考えています。
「転生待ち案」は、表には出ない。
けれど、それらがあるからこそ、最終的に世に出るデザインは、
より研ぎ澄まされていく。
そう信じながら、
今日もまた、新しい案をつくっています。